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――面接では「自分を出すことが大事だ」と思っている人もいると思いますが、そういう考え方は危険なのでしょうか。
杉浦そんなことはないと思いますよ。正しく物事を伝えていくことが大事で、その人がそういうスタイルで働いていきたい、そういうスタイルなんだ、ということであれば、そのまま伝えて行けば良い。相手に合わせることが得意なのであればそうすれば良いし。その人自身がどういうスタイルで、自分をどう正しく伝えていくかが大事だと思います。「こう伝えなさい」「こうあるべきだ」という面接指導は違うのではないかと、個人的には思います。
――今まで採用されてきた人は、自分を正しく伝えられた人、ということですか。
杉浦いや、必ずしもそうとは限りません。採用する側のアセスメントがちゃんと機能しているわけではないので。機能していればそうなるかもしれませんけど、結局は好き嫌いで選ばれたり、未熟なアセスメントで選ばれるケースが往々にしてある。だからこそ、採用されたのに辞めていく人がこれだけ出ているんです。
――そう考えると、“即戦力”を採用することは本当に可能なのでしょうか。
杉浦可能か不可能かで言えば、可能だとは思います。ただ、問題は採用する側がどうやったら即戦力として機能するかを理解しているかどうか。その人がどんな能力を持っていて、どんな風土に立ったらパフォーマンスが上がるのかを採用する側は考えないといけないし、採用される側は自分の能力を正しく伝えられることが大事です。
――野球などは日本からメジャーに行って、チームや環境が変わってもパフォーマンスを発揮できる人もいれば、できない人もいる。できない原因は即戦力としての働きをしないから、という場合も多いですよね。環境の問題、当人の問題もあると思いますけど。
杉浦両方ありますよね。野球は4番バッターばかりを揃えても意味がないし、チームの風土や考え方、規律もあるだろうし、影響力の強い選手や監督と馬が合わない場合もあるでしょう。逆にそういったものが合えば、鳴かず飛ばずだった選手が大活躍することもある。
――どんな環境でも即戦力になれる人もいますよね。そういう人に通ずる特徴はありますか。
杉浦圧倒的なスキルを持っていることでしょうね。周りがその人に何も言えなくなるぐらい圧倒的なスキル、環境に左右されない能力。それと、パフォーマンスが上がるのは自分がグッドコンディションにあるからです。グッドコンディションに上げることを自分でできる人は活躍し続けられます。イチローなんかは典型的な例ですよね。周りに左右されず、試合で結果が出せる。実際には、周りの環境によって自分のコンディションが浮き沈みしてしまうことがほとんどです。
――メンタルの強さも必要でしょうか。
杉浦何をもってメンタルが強いと言うか、ですよね。何を言われても動じないとか、何を言われても気にしないというのは、良し悪しだと思います。自分をグッドコンディションに持って行ける人達は、実は繊細なんです。意識して何かをやっていないとグッドコンディションに持って行けないことをよく知っている。だから、タフな人が必ずしもパフォーマンスが高いわけではないんです。
――職場によってはメンタルを鍛えるような教育方針を持っていることもありますが、パフォーマンスの多寡とは一致しないということですか。
杉浦メンタルが低い状態では当然パフォーマンスは上がりませんから、メンタルを下げないことは大事です。大事なことは、コンディションを良くしていくこと。メンタルトレーニングにどれだけ効果があるかはわかりませんが、コンディションを良くするためには大事なことでしょう。ただ、私の考えでは行動を習慣化していくことが大切で、一般的なメンタルトレーニングが有効かどうかは別な問題な気がします。自分なりにグッドコンディションに持っていくためのルーティンを持つことが重要なのではないでしょうか。