就職活動の学生による会社選びは間違っていないのか?

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就職活動

――最近の学生は何を基準に会社を選ぶのでしょうか。

杉浦今は売り手市場で学生側が強い。しかも、学生が活動できる期間が短くなってきているので、どうしても大手・有名企業が選ばれる傾向があります。

――就職活動以前に知っている、知らないという部分が大きいと。

杉浦大きいですね。

――「働くイメージ」ができていないからでしょうか?

杉浦いや、そういうことではなくて、知らないから受けないし、受けようがないし、知っている会社は受ける、ただそれだけだと思います。

――でも、知っている会社の数は限られているわけで、全員がそこに行けるわけではない。そういう会社選びをして就職できる方は良いと思うんですけど、多くの人は行きたい所に行くことはできません。会社選びをどのように考えれば良いのでしょうか。

杉浦会社を選ぶという考え方より、とにかく就職活動をしていく中で、自分が活躍しているイメージが湧く会社を見つける為に行動する、という事が建設的なのではないでしょうか。「○○会社に入りたい」という気持ちはわかるし、それはとても大事です。しかし、全員が入れないのであれば、就職活動で大事なことは、結局は決め打ちせずにいろいろ受けることだとも思います。色々な会社を受けていく中で経験値も溜まっていくし、見えてくるものもある。自分が「こういうことをやりたかったんだな」と、呼び起こされるものもあると思います。

――業種、職種を限定せず、幅広く受けるのが良いのではないか、と。

杉浦可能であればそうするのが一番良いと思います。

――しかし、最近は就職活動期間が短いので、時間が限られますよね。

杉浦3月に解禁されるわけですが、実はその期間しか就職活動できないわけではない。インターンシップ期間もあるでしょう。夏以降に採用活動をしている会社もたくさんあるし、実際にはもっと前から活動して、企業に接触できる。その人がやっているかやっていないかの話です。

――最近はインターンも増えていますが、インターンはどっぷり一つの企業にはまることになります。市場を広く見るという観点とは離れたりしませんか?

杉浦インターンシップから採用されるのは一つの理想だと思います。ただ、インターンシップにも「なんちゃって」的なものがあるわけです。ワンデーとか、会社説明会と変わらないものもある。インターンシップは仕事に触れることも大事ですが、自分のコミュニティーを実感したり、リアルな人間関係に触れることも大事です。仕事場の人間関係にリアルに触れることで「これならやっていける」「これではできない」と判断する。

――判断できたら打ち切って次に行く、ということですか。

杉浦ここはないな、ということであれば。

――「ここはないな」と思いながらインターンシップを続けるのは不合理だ、と。

杉浦目的をどこに置くか、ということだと思いますよ。入社する、しないにかかわらず、学べることも多いわけですから。アルバイトだって、その会社に入社しようとしてアルバイトしているわけじゃない。でも、アルバイトはお金を稼ぐと同時に、擬似的に社会を経験するという側面もあります。入社しないからアルバイトを辞めるわけではない。それと一緒ですね。

――学生が入社した時に「この部署に行きたい」という場合、会社の方針で思うように行かないこともあると思います。インターンでも一部しか見ることができませんから、全体を知ることはできない。そういう危険性もありますよね。

杉浦それを言い始めると切りがない(笑)。ある程度、期間が区切られるとしても、リアルな場面に接して判断するというのは大事だと思います。期間が何日なら良いのか?という問題は別にして。ただ一方で、採用側も希望部署に配属できないケースが多い。そこは学生にちゃんと伝えないといけないですよね。
同時に、企業は学生に対して「将来、何をやりたい?」「10年後、何をやっていたいと思う?」と聞きすぎると思うんです。社会人経験がない人間が10年後のビジョンを明確に語れるのは無理があるかと。企業はそれを求め過ぎてはいけないし、逆に企業側が求めるのであれば、きちんとそこに配属しないといけないのではないでしょうか。

――それは新卒だから、ですよね。中途に関しては質問しても良いのでしょうか。

杉浦もちろん。キャリアイメージと自社が提供できるものの差は確認が必要ですから。提供できないのであれば、納得してもらって入社させるのか、あきらめてもらうのか、ちゃんと言わなければならないでしょう。先ほどお話しした内容は新卒の場合ですよね。

――企業側はなぜそんな質問をするのでしょうか。

杉浦何となく聞く人と、ガチで聞く人がいるでしょうね。何となく聞く人は、単純についつい聞いてしまう。ガチで聞く人は、将来のビジョンを持つことは大事だ!というのが前提。そういう人は多いですね。ちゃんと自分の将来のことを考えているのか確認するために聞くということです。

――ガチで聞く人はそこに選考基準がある?

杉浦きっとそうなのでしょうが、私からすると何の意味もない質問です。もし、本当に質問に答えて希望を伝えたとしたら、採用する以上はちゃんとそこにアサインしてあげないと、お互いに不幸だと思います。

――経験してダメだったら他に行きましょう、ということですね。まずやらせてみない限り、そういう質問をすること自体がおかしいと。

杉浦ナンセンスだし、意味がない。特に日本は総合職採用をしてとりあえず与えられた仕事をやれ、という社会ですから、とにかく「入ったら頑張って。その先に5年後があるから」ということで良いと思います。

杉浦二郎
取材先人物紹介:杉浦二郎
2015年9月まで三幸製菓株式会社の人事責任者、現株式会社モザイクワーク代表取締役。
三幸製菓では、「カフェテリア採用」「日本一短いES」などを生み出し、TV、新聞、ビジネス誌など取材経験多数。講演会の講師、採用コンサルタントの実績多数。地元新潟で産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組む。
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